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五輪塔とは何か

2015/12/12



前回は西大寺・奥之院の五輪塔について紹介させていただきました。

ではそもそも五輪塔とは何なのか、そのお墓としての意義、仏教美術としての意義などを、簡単に記してみたいと思います。

五輪塔の生みの親とも呼べる立場に当たるのが、平安末期の真言宗の僧侶である覚鑁(かくばん)です。
平安時代の終わり頃というと、しばしば指摘される通り末法の世の中、社会不安の時代であり、そういった不安を逃れて慰めを得たいと願っていた人々の間に浄土思想が大流行していく時期です。
いわゆる鎌倉新仏教が登場してくる下地ともなった時代ですよね。
そのような世相に当たって、『五輪九字明秘密釈』という著作を記し、真言系の密教と浄土思想とを融合させて、一つの石塔の形を生み出したのが覚鑁なのです。

その形というのがつまり、五輪塔だというわけです。
「五」とは、空海を開祖とする真言密教に言うところの「五大」、すなわち「地、水、火、風、空」を指します。
これらは宇宙の物質的な側面を五種に分けて象徴するものです。
実際の石塔との対応関係を示すと、上の写真のようになります。
一番下の四角い台石が「地」、丸い玉石が「水」、三角を意味する笠石が「火」、宝珠の下の半円部分が「風」、宝珠部分が「空」にそれぞれ対応しています。

この五大に、これらの性質を見る認識作用たる「識大」を加えて「六大」とするのが、真言密教の世界観ということになります。
仏教思想を突き詰めた場合、この認識作用と「私」という主体とを同一視してよいのかどうかという点は大問題になると思いますが、いずれにせよそのような認識作用の乗り物として、「私」なる存在が立ち上がってきているのは確かだと思われます。
つまり五輪塔というのは、認識を行なう(行なっていた)「私」が物質宇宙の全体に抱かれて一体化し往生する様、涅槃に至る様を体現した供養塔であるということになるわけです。
覚鑁は、極楽往生を願う人々の思いに対して、真言密教をベースに浄土信仰を取り入れた石塔の姿で、一つの回答を提示してみせたと言えるでしょう。

ちなみにこの五輪塔という石塔形式、祖形らしきものはインドや中国にも見られるそうですが、基本的に日本独自に考案され、発展・完成したもののようです。
また、その教義的な側面を決定的に洗練させたのは覚鑁ですが、実際の普及に当たっては、民衆の中に立ち入って布教などの実践活動を行なう「聖(ひじり)」と呼ばれる僧侶たちの功績も多大だったようです。この場合は真言系が中心ですので、いわゆる「高野聖」ですね。
かくして一時は日本の供養塔、お墓の形式の中心にまでなった五輪塔ですが、徳川八代将軍・吉宗の時に出された倹約令によって建立されることが減り、現代の和型三段墓に通ずるよりシンプルな形に主流の座を取って代わられた、ということのようです。
とはいえ、流行り廃りによって五輪塔の宗教的意味合いが消えてしまうわけではありません。
現代でも五輪塔は、供養塔の形として見直され、勧められるべきものであると、我々どもでは考えております。

なお、今回の記述に当たっては、お墓文化研究の第一人者である小畠宏允先生の著述を大いに参考にさせていただきました。
・小畠宏允「仏教とお墓」(『日本人のお墓』所収、石材産業協会、2003年)

密教についてはこちらもご参照ください。
・松長有慶『密教』(岩波新書、1991年)


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