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東京お墓紀行@:小平霊園樹木葬墓地
2016/05/25



先週末は私的な用件にて、東京に行っておりました。
で、せっかく遠出をしたついでに、もう少し足を伸ばしてあちらのお墓をいろいろ見て回ろうかと思ったおったのです。
まあ結局は時間に押されて、ゆっくり見学することができた「お墓」は都立の小平霊園ともう一ヶ所だけなんですけどね(笑)
さて、われわれと同じ業界の方であれば、小平霊園と聞いてピンとくるものがあるかもしれません。
そうです、ここは大規模な都立霊園の中でも、初めて「樹木葬墓地」を運用しているところなのです。
樹木葬というのはひと口に言うとアレですね、死んだら自然に還ろう、みたいなコンセプトのもと、遺骨を納めたあとに木を植えたりなどするエコロジーアピールの強い埋葬法ですね。
正直、あまりにイメージ先行な部分があるのでは、と思ったりするのですが、自然や環境といったものへの連想は現代においては訴求力が強いようで、非常な人気を博していると聞きます。
何せこの小平樹木葬墓地、初回募集は500名の枠に対して、16倍の応募があったそうですからね。。
ちなみにわれわれ石屋は、ほとんどの者が樹木葬を嫌っております。
そりゃそうです、お墓なのに石を使ってくれないものですから(笑)
まああれこれ論ずるよりも、写真を見ていただくのが一番でしょう。
霊園正門から入って、管理事務所を過ぎた左手にある樹木葬墓地は上に掲載したようなところです。
何というか、たしかに清潔感や爽やかさはあると思います。
ジメッとして苔むしたお墓の印象からは遠ざかっていると言いましょうか。
ただしかし、イメージ商法と言うと口が悪いですが、亡くなった方をお祀りするというのがどのような営みであるべきか、みたいなところへの視野は抜け落ちているような気がいたします。
墓地が二区画に分かれているのが見て取れるかと思いますが、片方は樹木一本につき遺骨一体の個別埋葬型、もう片方は樹木一本の下に複数を収容する合祀型だそうです。。
具体的な埋葬法については、地下部分にコンクリート製の筒型カロート(納骨室)が造られており、霊園職員の方に遺骨を手渡して埋蔵までやってもらうのだそうです。
何じゃそりゃ、と言いたくもなりますが、要するに表面から一皮むけばやっていることは普通の永代供養墓や合祀墓と同じなわけです。
ただそれでも圧倒的な倍率の抽選が発生するということは、「自然回帰」というイメージがいかに強力かということを物語っているのでしょうね。
実態はコンクリート・カロートへの遺骨収容でしかないわけですが……。
5月半ばというよい季節に行ったこともあり、芝生や樹木の新緑が美しいのは間違いありませんでした。
ただ、また少し口の悪い言い方をするならば、これは結局は体裁を整えられた野原に過ぎないとも思うのです。
本当にあるがままの自然というわけでもなく、人間の手で整備され化粧を施された、人工環境としてのきれいな野原……。
そんなきれいな野原に、誰が誰を悼んで弔ったかということを示すものもなく、ただ遺骨だけが埋蔵されているという状況は、私なんぞはいささか不気味に感じもします。
これをそもそも「お墓」と呼んでよいのかも、議論の余地はあると思います。
お墓とは何なのか、何であるべきなのか、いろいろ考えさせられる場所でした。
